ファイザー社の失われた特許総堀

Pfize VS Jialing

一つの発明特許を各国で出願する場合、出願人は各種状況を踏まえ、各国の特許法及び裁判例に応じ、特許明細書などの出願書類に対し適当な調整を加える必要がある。各国の現地代理事務所は出願書類をそのまま直訳するだけでは不十分であり、地元の強みを発揮し、地域規制と自身の経験に照らし、出願過程において出願人に適切なアドバイスとサポートを行い、当該特許の将来的な応用力と堅実な特許性を構築する。

中康CMHのデータによると、2015年、中国では血中脂質を下げる薬剤アトルバスタチン類の売上高は83.19億元に達した。その中のアトルバスタチンカルシウム錠剤は、主にアメリカのファイザー社のオリジナル研究開発薬品リプトー(Lipitor)と、北京嘉林薬業のジェネリックの阿樂、この二つの薬品ブランドによって市場を独占している。

2007年、ファイザー社は特許権侵害をもって北京嘉林薬業を提訴、それに対し嘉林薬業および第三者の張楚は、それぞれファイザー社の当該特許に対し無効化請求を行った。
八年に渡る三審の判決を経て、2015年、中国最高人民裁判所は当該特許明細書に関し、アトルバスタチンの水和物の水分含有量とそのX線粉末回折パターンについて確認することなく、またその製造手続に対しても明確かつ十分に說明することなく認定したが、これは特許法第26条第三項『明細書は、当該発明が属する技術分野の通常知識を有する者が、その内容を理解し、それに基づいて実現することができるように、明確かつ十分に開示しなければならない。』に準拠していない。ファイザー社のアトルバスタチンI型の結晶水特許はすべて無効宣告を受け、ファイザー社は、特許権侵害による損害賠償を請求できないだけでなく、強力な市場競争力を有する特許総堀を失う結果となった。

執筆:プロジェクト部門・特許スペシャリスト 王又加